北千里動物病院

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更新日 2021-04-20 | 作成日 2021-04-20

肛門嚢炎・肛門嚢破裂(犬猫)

犬猫には肛門の両脇(正面から見て4時、8時の位置)に肛門嚢という匂い袋が存在します。
イタチやスカンクの匂い袋を想像していただけるとよいと思います。
肛門嚢には悪臭のある分泌液が溜まってくるのですが、普段は排便時や興奮時などに自然排出されています。 犬の場合はトリミング時にトリマーさんが絞って排出させていることもあるでしょう。

肛門嚢の液体の出口は、肛門そのものの際にあり、常に便や泥に汚染される環境にあります。 
この肛門嚢が何らかの理由で炎症を起こしたものが肛門嚢炎です。
肛門嚢から肛門までの導管に炎症が起きると管がふさがってしまう事があります。
そうなると行き場を失った肛門嚢内容物が溜まりに溜まってきて破裂を起こします。
これが肛門嚢破裂です。 
主な原因としては細菌感染ですが、不適切な肛門嚢絞りなども原因となりえます。
肛門括約筋の筋力低下や肥満なども原因の一環とされているようですが、実際の臨床では痩せていても発症していることも多いですし、外肛門括約筋の菲薄化など一切ない症例でも肛門嚢破裂をよくみます。
一般に、チワワやシーズー、ミニチュアダックス、トイプードルなど小型犬でよくみる疾患ですが、大型犬での発症もありますし、猫でもみられます。


肛門嚢破裂(犬)


左の肛門嚢が破綻し、血様の膿が排出されています。
数日前からおしりに痛みがあり、排便時に痛がっていたそうです。

治療としては破綻した肛門嚢の洗浄を行い、膿の排出、壊死組織の排出を促していきます。 
これを何日間か繰り返します。
通常、処置に麻酔は行いません。




洗浄を数日繰り返したあとです。
かなり孔がふさがってきました。
このあたりからレーザー照射を併用し、治癒を促進させます。


7日めです。
瘻孔はふさがり、痂皮(かさぶた)が覆っています。
洗浄の必要はなく、本人的も痛みはなくなっています。
当院の治療法では通常このような治療プロセスを踏み、手術をすることはめったにありません。



肛門嚢破裂(猫)


左の肛門嚢が破裂し、かなり大きな瘻孔が発生しています。
ガビガビに乾いた膿が蓋をしている状態で来院されました。
この写真は、毛を刈って洗浄した後です。
傷口に毛が侵入すると治癒が悪くなり、感染の機会が増えます。なので毛を刈ります。
また、傷口をなめ続けられると、一向に治りません。カラーは必須です。
薬が飲みにくい子でしたので、2週間持続タイプの抗菌剤を注射しました。



洗浄を繰り返し、感染を制圧していくと、肉芽組織(穴を埋める組織)が出てきました。
肛門周囲は血流豊富なため、初期の病変が巨大に見えても結構はやく治っていきます。
創面に適用する薬剤も適宜変化させていきます。




傷がどんどん治り始めています。
肉芽組織が穴を埋め、上皮化(あたらしく皮膚ができること)が進んでいます。
レーザーを併用し、治癒促進をはかります。




レーザー照射中です。
これは痛みのある治療法ではありません。
ほんのり温かみは感じるでしょう。 組織血流の増加、治癒促進が目的です。




小さな痂皮(カサブタ)があります。
孔はふさがっています。
ここまでくるのに2週かかっていません。
この症例も外科手術なしで治癒しています。


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