内視鏡症例・消化管内異物
異物の誤飲は比較的よく診ますが、小腸を閉塞させる危険のある異物、消化器に損傷を起こす可能性のある形状の異物などは手術による摘出や、
内視鏡による摘出を行います。
比較的安全と思われるものは催吐剤による吐出を試みる場合もあります。
普段から異物を口にするクセのある動物は要注意です。
今まで診てきた異物としては、ボール類、乾電池、指輪、固いガム、骨、石、糸、ひも、裁縫針、カッターの刃、靴下、ストッキング、タオル、プラスチック片、植物の種、竹串・・・
思い出しながら書いても枚挙にいとまがありません。
飼い主さんが見ている前で異物を飲んだ場合は異物誤飲の事実がハッキリしていますが、知らぬ間に飲み込んだ場合は、元気がない、嘔吐などの症状だけで来院されます。
嘔吐、元気消失だけが症状ですとその原因は多岐にわたりますので、念入りな問診の上、様々な検査を行っていくことになります。中毒や内臓の問題でも嘔吐はよく見られますので、スクリーニング検査として血液検査等も必要な場合があります。
金属や石などはレントゲンですぐに発見できますが、布やプラスティックなどはハッキリしないこ
とも多く、造影検査、内視鏡が必要なこともあります。
内視鏡による異物摘出例
指輪を飲み込んだワンちゃんです。
レントゲン検査
ハッキリと指輪の形が分かります。
2015年現在、当院の内視鏡は上記の最新型機種を使用しています。
オリンパス社 動物専用電子内視鏡です。
画像は旧機種に比べ先鋭化され、モニターも大型フラットパネル化しました。
ヒト用内視鏡との大きな違いはその長さ(動物用が長い)にあります。
(大型犬などでは長さがどうしても必要になります)
内視鏡検査
まず、全身麻酔をかけます。
動物ではヒトのように無麻酔で内視鏡を飲むことは不可能です。
内視鏡を挿入しながら食道、胃内の状態なども同時にチェックします。
写真は異物を発見した所です。
摘出した異物
V字鰐口の把持鉗子でつかんで摘出しました。内視鏡鉗子は状況によって使い分けます。
指輪に大きな輪ゴムがからみついていました
内視鏡で摘出できる異物は限られています。大きすぎるもの、把持出来ない物、引き出す際に食道に損傷を起こす可能性のあるものなどは手術が適用になります。
基本的に食道内異物、胃内異物のみが適用で、既に腸内に移動して閉塞した異物を内視鏡で摘出する事はできません。
手術で摘出した異物の例
体重1.2kgのチワワの小腸から摘出した植物の種子
クッションの中綿
よじれてひも状になり、小腸広範囲に閉塞していました。
綿といえども、よじれたらひもになりますので結構危険です。
石です。小腸に詰まっていました。
よじれたタオル
小腸広範囲に閉塞していました。
この例ではダメージの強い部分の小腸切除が必要になりました。
電池の入ったフィルムケース。
胃内に長期にわたって存在していたようです。
このように重い異物は誤飲から長期にわたって胃内に存在することがあり、
間歇性嘔吐などの症状を出してはじめて来院し、発見される場合があります。
食道潰瘍(内視鏡写真)
噴門(胃の入り口)手前に大きな潰瘍がみられます。
潰瘍部からは炎症細胞のみが検出されました。
検査時には見つかりませんでしたがおそらく異物が占拠していたものと思われます。
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